事の始めはいつものあれ。ゼウスがふらふら~っと、ヘラ神殿に仕えていた乙女イオに浮気したのでした。
ヘラ「あんたまた浮気したでしょ!?」
ゼウス「そんなことない!絶対ない!!」
ヘ「じゃあその雌牛は何!?」
ゼ「えっ、ほら、きれいでしょ(しろめ)」
ヘ「そうねー、じゃあちょうだい」
ゼ「うぇっ」
(ピーテル・ラストマン『イオと一緒にいるゼウスを見つけるヘラ』1618)
ヘラから隠そうとイオを牛に変えたゼウス。しかしその牛はヘラに連れて行かれてしまいます!
しかもヘラは怪物に牛(イオ)を見張らせます。その怪物というのがアルゴス。
アルゴスは百の目を持っており、全ての目が同時に眠ることはありません。空間的にも時間的にも隙のない奴です。
しかしどーーーしても愛するイオを助けたいゼウス。そこで知略に長けたヘルメスを遣わします。
ヘルメスはどうにかこうにかしてアルゴスの全ての目を眠らせることに成功!
(笛を吹いたとか、つまらない話を聴かせたとか…)
(ピーテル・パウル・ルーベンス『ヘルメスとアルゴス』1636-1638)
もうぐっすりですね。ぐーっと。そして無防備になったアルゴスを一気に倒します。ずばー!!っと。
ヘラはおこです。もう1段階上がって激おこだったかもしれません。
とりあえず自由の身になってしまったイオのところに虻の群れを送りつけます。ぶんぶん。自分は何もしてないのにたまったもんじゃないですね。このままイオは、このうるさい連中を引き連れて放浪します。
その様子は、ギリシャ悲劇『縛られたプロメテウス』にも登場します。
そして倒れてしまったアルゴス。ヘラはその目をくりぬいて(!!)
自分の飼っていた孔雀の羽に取り付けました。だから孔雀の羽はあんな模様をしているそうです。
左の女性の膝に首が乗っている気がしますね。ええ、乗ってますね。
あんまり深く考えないようにしましょう。
そんなこんなで百の眼を持つ怪物アルゴスは退治されてしまったのでした。
この1件でヘルメスは「アルゴス殺し」という二つ名をもらいましたが、はたしてこの出来事、誰が幸せになったのでしょうか…。