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西洋古典学って、ご存知ですか?

叙事詩を読もう!~六脚律とは~

 

六脚律(ヘクサメトロス、Hexameter)とは、古代ギリシアより伝わる叙事詩ならではの韻律です。

 

ー U|- U|- U|- U|- u u|ー X

六脚律の構成を図にするとこうですね。

Uは長音節でも短音節×2でもいいところ、Xは長音節または短音節×1です。

「長・長」の塊はスポンデー、「長・短・短」はダクテュロスと言います。

塊のことは韻脚といいます。以下、脚と呼びますね。

 

この六脚律、長所としては「単語の音節の長さがわかること」です。

例えばラテン語第1変化名詞の単数主格と単数奪格。長音符がなくなるとどちらかわからなくなりますが、韻律にはめると最後の a が長いか短いかが一発でわかります。

 

そして短所は「語順がむちゃくちゃになること」

もともとギリシャ語もラテン語も、現在のフランス語やドイツ語みたいに語順がかっちり決まっているわけではないのですが、それでも主語は頭だし、その後に動詞で、目的語で、関係代名詞の先行詞はだいたい直前です。

が、それをぶっ壊すのが叙事詩を含む韻文です。

まぁでも安心してください。慣れればたいしたことないです。主語が文の最後にきても、韻律にはめれば格がわかるのでなんとかなります。

 

そうそう、韻文を読む時にはリエゾンやエリジョンが発生します。フランス語をやっている方ならピンとくるかもしれませんね。

リエゾン

ある単語が子音で終わり、次の単語が母音で始まる場合、子音が次の母音にくっつき、前の単語からは離れること。

*エリジョン

母音が連続する時、弱い母音が消されます。また、hやmといった弱い子音も消えることがあります。

このあたりは本当に慣れが必要です。たくさん読んで感覚をつかんでいくのがいちばんだと思います。

 

では各叙事詩の序歌の読み方を載せて一旦終わりとします。

音節の切れ目は " - "、脚の切れ目は " / " で示します。

リエゾンが起きたところは " ^ "、エリジョンが起きたら消えたところを ( ) で示しますね。

 

ホメロスイーリアス』 

μῆνιν ἄειδε θεὰ Πηληϊάδεω Ἀχιλῆος
οὐλομένην, μυρί᾽ Ἀχαιοῖς ἄλγε᾽ ἔθηκε,

mē-ni-n^a / ei-de the / ā pē / lēi-a-de / ō a-khi / lē-os

ū-lo-me / nē nē / mū-ri a / khai-oi / s^al-ge e / thē-kē

 

ホメロスオデュッセイア』 

ἄνδρα μοι ἔννεπε, μοῦσα, πολύτροπον, ὃς μάλα πολλὰ
πλάγχθη, ἐπεὶ Τροίης ἱερὸν πτολίεθρον ἔπερσεν:

an-dra mo / (i)en-ne-pe / mū-ra po / lyt-ro-po / n^os ma-la / pol-la

plankh-thē / (e)pei troi / ē-s^i-e / ron pto-li / eth-ro-n^e / per-sen

 

ウェルギリウスアエネーイス

Arma virumque cano, Troiae qui primus ab oris
Italiam, fato profugus, Laviniaque venit

ar-ma wi / rum-que ka / nō troi / ae quī / prī-mu-s^a / b^ō-ris

ī-ta-li / am fā / tō pro-fu / gus lā / wī-nia-que / vē-nit

 

オウィディウス『変身物語』

In nova fert animus mutatas dicere formas
corpora; di, coeptis (nam vos mutastis et illas)

in no-wa / fer-t^a-ni / mus mū / tā-tās / dī-ce-re / for-mās

kor-po-ra / dī coep / tīs nam / wos mū / tas-ti-s^e / t^il-lās

 

んーー、ただ、『変身物語』は叙事詩のくくりに入れていいのかが微妙です。

次回は「そもそも叙事詩とは何ぞや!」についてお話します♪