かなり間が空いてしまいましたが(ごめんなさい…)
前回は怪物アルゴスが死に、ヘラ様の怒りが爆発したところで終了しました。
もうすぐ1巻が終わりますね。
はたしてイオはどのような運命を辿り、物語はどっちへ進んでいくのか!?
今回は2巻にも入っていきます。引き続きお付き合いくださいませ。
ヘラの怒りを被ったイオは世界中をさまよい、ナイル川に辿り着きました。
この放浪の過程は、アイスキュロスの悲劇『縛られたプロメテウス』をご参照ください。
とにかく怖くてパニックになって、牛の姿のまま必死に歩いたイオ。もう疲れたとばかりにモーと鳴きました。
ユピテルはヘラに「もうええやろ」と言って(※関西弁じゃない)なんとかヘラをなだめ、イオは人間の姿を取り戻しました。
その後、イオはエジプトで神格化されました。女神になったイオは後々登場しますのでご期待ください♪かなり後ですが…
また、イオにはエパポスという息子も生まれました。ユピテルとの間にできた子かな?
次のお話はこのエパポスくんのお友達・パエトンくんが主人公です。
実はパエトンくんは太陽神の息子なのですが、エパポスくんをはじめ友人一同は信じてくれないばかりか、「おかんの言うこと全部信じるんかいなwwwそんなん嘘やろwww」とからかってきます。
パエトンくんはしっかり煽られ、母親に「証拠くれ証拠!!」と迫ります。
母クリュメネが「嘘じゃないから神殿に行って直接尋ねなさい」と言ったことで、パエトンくんは旅に出たのです。
(ここが1巻と2巻の境目です)
やって来た太陽神の神殿はそれはそれは豪華なもので。鍛治の神ウルカヌスが細工を施した神殿は宝石で燦然と輝き、玉座の周りには”四季”たちが控えていました。
道中でも海の神々一同を目の当たりにし、怯えきっていたパエトンに神は話しかけました、「我が息子よ」と。
それを聞いたパエトン、自分の父が太陽神であるという事実に喜び勇みました。そして、「疑いを晴らすためなら何でもやってやるぞ」という父の言葉に「太陽の馬車を運転させて!」と返しました。
その言葉に「やってもたー…」と頭を抱えた父。いちおう人間であるパエトンに、太陽の馬車を運転できるはずがないのです。
「それだけは勘弁してくれ、他のもんやったら何でもええから」と忠告する太陽神。一方のパエトンは頑として譲りません。
結局神が根負けし、夜明けの時が来て、パエトンは金色に輝く馬車に乗り込みました。
ニコラ・ベルタン『アポロの馬車に乗るパエトン』1720年頃、ルーブル美術館
出発してすぐ、馬たちは乗り手がいつもと違うことに気付きました。太陽神曰く、普段から手懐けることに苦労する馬たちが暴れだしたのです。こうなってしまっては、パエトンに制御できるはずもありません。
馬たちは東西南北めちゃくちゃに走り、上に下にと動きます。
そして太陽の馬車ですから、当たり前っちゃ当たり前、暑いのです。いや、熱いのです。
馬車が下に行くと木々が燃え、水が干上がりました。あの偉大なるネプトゥーヌスも、熱さに耐えかねて海面から出て来られません。
この惨状のなかついにブチぎれたのが大地の女神です。
「オラァお前神々の王とか言うとんやったらこの状況なんとかせぇや!!!お前世界丸ごと潰す気かボケェ!!!」と怒鳴る肝っ玉母ちゃんガイア(※もっとお上品です)に気圧され、ユピテルはとある策を実行しました。
パエトンに向かって雷を落としたのです。
セバスティアーノ・リッチ『パエトンの墜落』1703-4年、ベルーノ市立美術館
パエトンはわたわたとするばかりで何もできていませんでした。
何人かの神々の合意のもと、こうすることでしか燃え盛る世界は救えなかったのです。
雷を食らったパエトンは真っ逆さまに墜落。もちろん、人間の体にユピテルの雷を受けて生きているはずもなく。
彼の亡骸を受け止めたのはエリダヌスという河でした。
そして、水の精たちが彼を埋葬したのです。
母と姉妹たちはパエトンの墓を見て嘆きに嘆きました。
そうやって何日もが過ぎるうちに、文字通り足から根が生え、姉妹たちは樹に変身しました。母は娘たちの変身を止めようとするのですが、樹皮を剥ぐのは皮膚を折ること、枝を折るのは指を折ることに相当するのですから、痛いのです。
母に別れを告げ、パエトンの姉妹たちは変身を終えました。その時樹皮から滴った涙が樹液になり、凝固し、琥珀になったということです。
サンティ・ディ・ティト『ヘリアデス』16世紀後半、ヴェッキオ宮殿
ちなみに、パエトンの姉妹たち(「太陽の娘たち:ヘリアデス」とも呼ばれます)はポプラの樹に変身したと言われることが多いのですが、オウィディウスは樹の種類に言及していません。
今回は以上です。主にパエトンくんに関係するお話でした。
次からはまたいろんな恋が動きだす予感!