Εὕρηκα!

西洋古典学って、ご存知ですか?

ディズニー映画『ヘラクレス』コメンタリ ~Party in Olympus~

前回の記事はこちら 

eureka-merl.hatenablog.com

 

※前回は何分何秒の画像かを併記していたのですが、私のPCに入っているDVDプレイヤーが平気で嘘をついてくるのでやめます(・ω・`) 代わりに場面ごとに適当にタイトルをば…。

 

本編に入ります。主人公ヘラクレスがオリンポスで生まれ、その誕生を神々が祝う場面です。

 

【オリンポス宮殿と太陽の馬車】 

タイトルが表示された後、まずオリンポスの神々の住まいが映し出されます。山上ではなく雲上の宮殿です。

ヘシオドスはじめ古代の作家の記述によると、だいたいの神々はオリンポス山(標高2,917m)の山頂に宮殿を構えて住んでいることになっています。雲の上の宮殿というのは現代的発想とも言えるかもしれません。

 

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ここを燃える馬車(画面中央)が通過します。

動きが速すぎて誰が乗っているのか見定めるのにものすごく苦労したのですが、燃える馬車といってまず思い出したのはパエトン少年の神話です。

パエトン少年については、オウィディウスの『変身物語』第2巻などに詳しい記述があります。

となるとこれは太陽神の馬車でしょうか。車輪が太陽を模した形になっているあたり、ちょっと自信あり。

では太陽神とは誰のことか。パエトン神話に出てくる太陽神はヘリオスという名前です。ギリシア語でそのまま「太陽」を意味する名前です。

しかしどうも彼じゃない気がします。というのも、現代でより知名度のある太陽神としてアポロンがいるからです。米国の作家トマス・ブルフィンチが書いた『ギリシアローマ神話』では、パエトン神話でも登場するのはアポロンです。

というわけで現時点での私の予想は「アポロン」。

 

 

【ゼウスとヘラの子!】

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この画像の女神はヘラ男神ゼウスです。赤子がヘラクレス

ディズニー版ヘラクレスの設定を知らない方のために今一度言っておくと、ヘラクレスはゼウスとヘラの子ということになっています。つまりどうあがいても神です。

おそらくこのブログを読んでいる方なら、本当はヘラクレスはゼウス(神)とアルクメネ(人間)の子であるとご存知かと思うので、少々気持ち悪いかもしれませんが、気にしてはいけません

 

 

【たくさんの神々】  

3秒ほどでものすごい人数が映し出されます。左から順番に。

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・肌が紺色?で紅い甲冑をつけた男神。よく見るとさっき馬車に乗っていたのと同じ神です。見た目も若そうですし、やはりアポロンと見るべきでしょう。兜のとさか部分も太陽神らしくぴかぴかしてる。

・肌が緑色で果物をたくさん抱えた女神。豊穣の女神デメテル

・肌が青く、鱗やヒレも見受けられる男神。三叉の矛も持っているので、海を治めるポセイドン

・頭上に杯をのせた女神。あまり確信は持てませんが、神々のお酌をしているというヘベではないかと…。

・ひとりとばして、弓に矢をつがえる、大きな翼を持つ男神。愛の神エロスでしょう。いわゆるキューピッドです。幼児というイメージが強いかもしれませんが、古典期は青年神ということになっていたのですよ。

・とばされたエメラルドグリーンの女神。証拠となるものが何もないのですが、エロスの隣にいるからプシュケ(ギリシア語で「魂」の意味)、とかありえないかなぁぁと妄想中。

このふたりの神話大好きなんです。アプレイウス『黄金のろば』第4~6巻に書かれています。

 

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 ・フクロウを手に乗せ、武装した女神。間違いなくアテナです。フクロウは彼女の聖鳥。

  

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・鹿に葡萄を差し出している、狩猟モードの女神。アルテミスですね。

・武装して剣を振り回す男神アレス。短気な神として描かれているところが彼らしい。

・色気溢れる女神アフロディテ。彼女が絵画で描かれる時にはほぼ確実に登場するちびキューピッドみたいなのも浮いています。

 

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アフロディテの隣にいるのは、おそらく夫であるヘパイストス。よく見たら鍛冶屋っぽい恰好…なのかも。

 

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この数秒間、神々の間を縫うように飛び回っていたのがこの神、伝令神ヘルメスです。翼のついた帽子とサンダル、そして彼といえばこの特徴的な形の杖・ケーリュケイオン

 

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花束のアレンジはオルフェウスに頼んだようです。

オルフェウスといえばギリシア神話の中でも最も有名かつ優れた詩人。詩人といえば神(特にムーサ)に通ずる存在であり、芸事に秀でた彼には花束を作るなど朝飯前ということなのかもしれません。

ちなみに、彼を開祖とするオルフェウス教という密教古代ギリシアにはありました。

 

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台詞が続いているので画像2枚連続です。 

ナルシストの語源になったとして有名なナルキッソス。『変身物語』第3巻によると、彼は冥界の河ステュクスの水面に自分の姿を映して惚れ惚れしているはずなのですが、なんとこの映画では神に昇格しています。お前人間だろ?

そしてNarcissus discovered himself.というフレーズですが、『変身物語』だとナルキッソスに関してこんな予言があります。

「彼が自分を知ってしまわなければ(si se non noverit)」長生きできるだろう。

この一節を踏まえての台詞であれば、流石ディズニーと言わざるをえません。

 

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さて、ここでヘラクレスくんがお父さんのポケットから雷霆を取り出して遊びだします。雷霆といえば天空神ゼウスの武器ですね。そして咥える→痺れる→捨てる。

 

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そして捨てた雷霆がこの神の尻に刺さる。

赤ら顔になったこの神、おそらく酒と酩酊と狂気の神ディオニュソスです。 

 

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痛くて跳び上がるディオニュソスの後ろからアレスと…誰だ。

頭のぴかぴか具合からこの神がヘリオスではないかと考えているのですが確信ゼロ。

 

 

【ペガソス誕生】 

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この映画でヘラクレスの相棒となるペガソス。cirrus(巻雲)とnimbostratus(乱層雲)とcumulus(積雲)でできているという設定ですが、

本来の神話上ではメドゥーサの血から生まれています。なんて可愛くない設定なんだ。詳しいことは『変身物語』や『神統記』に書いてあります。

 

あと本来ペガソスを受け取った英雄はヘラクレスではなくベレロポンといいます。

ベレロポンはペガソスに乗って怪物キマイラ(獅子の頭、山羊の胴体、毒蛇の尻尾)を倒した英雄です。

でもある日ペガソスに乗って天まで上ろうとしたら「調子に乗るんじゃねえ」と怒ったゼウスが虻を放ち、ペガソスの尻を刺させました。そしてベレロポンは暴れたペガソスから落馬というかわいそうなことに。

神話ではいつも、神の領域に踏み込んだ人間が罰せられるものなのです。

 

*****

 

次回、東京ディズニーシーのハロウィンイベントでお馴染みのあの神様が登場します。

 

ハッハッハー!!