本当に長らくお待たせしました。
前回の記事はこちら。
前回までは赤ん坊ヘラクレスでしたが、一瞬で大きくなります(笑)
赤ん坊でありながら蛇をやすやすと退治してしまった ヘラクレス。その怪力も体の成長と共に順調に育った結果…
【羊とギリシア人】
場面が変わって「そこに君たちの食い物はあるのかい?」と聞きたくなる羊たちが登場します。
羊は毛を採取して糸・織物を作るため、そして食用として飼われていました。羊毛でできた布で彫刻などに見られる美しい襞ができあがるのか、私は未だ信じられません。その他ギリシャで家畜として飼われていた動物には牛、羊、山羊などがいます。
ちなみに古代ギリシャ文学には「牧歌」というジャンルがありますが、牧歌の主人公は家畜を世話する牧人たちです。牧歌の創設者テオクリトス(紀元前3世紀頃)の作品では牧人の中にもヒエラルキーが存在し、牛飼い>羊飼い>山羊飼い、となっています。
このヒエラルキーは、紀元後2世紀のギリシャ小説『ダフニスとクロエ』(作者はロンゴス)にも見られます。
のんびり草(?)を食む羊たちを蹴散らし爆速で駆けてくるのが青年ヘラクレス!
【ロバのペネロピーちゃん】
いやー、ヘラクレス大きくなりましたねー。
それはまぁおいといて、アンピトリュオンが飼っているこのロバ、ペネロピーという名前らしいです。
ギリシア語風に読むとペーネロペー。この名前で思い出すのは、叙事詩『オデュッセイア』に登場するオデュッセウスの妻ペネロペイアでしょう。
20年もの長い月日の間、夫の帰還を信じて待ち続けた貞女の鑑…ですが、このロバさんとの関係は不明。
今日はこの藁の山をフィデアスに売りつけるためやって来たアンピトリュオン。ちょっと綴りが違いますがギリシャにはPhidiasという彫刻家がいました。あのパルテノン神殿の建築で総監督にあたったという人物です。
どうもこのPhideasの方は彫刻家ではなく陶芸家のようですが。
体力面のいろんな数値が振り切れているヘラクレスは、価格交渉の間とにかくその場から動かないよう指示されます。
【赤い土器】
このおじさんが先ほど名前のあがったフィデアス。彼が扱っているのは全体が赤く、黒で模様が付けられた大小さまざまの土器。いわゆる黒像式土器と思われますが、黒く塗り潰された絵が少ないので、もっと前の時代に流通していた幾何学様式にも見えます。
フィデアスの仕事を手伝おうとするヘラクレスですが、何か問題を起こされては困るとおじさんはやんわり彼を追い払います。
少し凹むヘラクレスのもとに飛んでくる一枚の円盤…!
【円盤投げ】
少年たちが集まって円盤投げをしていたようです。
円盤投げといえばオリンピア競技祭(オリンピックの元になったお祭り)の種目のひとつでした。スポーツは将来「市民」になるギリシャの男の子たちが身に付けるべき教養のひとつ。このように遊びとして興じることもあったかもしれませんが、基本は運動場で裸で行うものでした。こんな街中で服着てやるもんちゃうかと…。
さて、ヘラクレスが「人数足りてる?」と聞くと、左の少年はやや歯切れ悪く「もう5人いるから…」と答えます。
するとヘラクレスは「5人じゃ足りなくない?」と返すのですが、少年は円盤をひったくって仲間たちのところへ戻ります。
偶数で集まって円盤投げをして「遊ぶ」ことがあったのかは存じ上げません…。もしお近くに専門家がいらっしゃれば教えてください~!
【むちゃくちゃ言われるヘラクレス】
少年たちは去り際に「What a geek!」「Destructo boy!」「Jerkules!」とヘラクレスに向かってさんざん言います。また、この後ヘラクレスが不慮の事故で広場を破壊するという騒動が起きますが、その時も町の人々は口々に「menace」「freak」などと言います。
まぁ明らかな悪口なのは英和辞典を引いていただければわかると思います。
上手いな~と思ったのはJerkulesですね。Herculesの英語読み「ハーキュリーズ」にJerk「ジャーク」を掛けた呼び名。ちなみに「ジャーキュリーズ」の日本語訳は「ヘボクレス」でした。嫌いじゃない。
つづく!!
今後はもっと頻繁に更新していくので何卒見捨てないでください~!