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西洋古典学って、ご存知ですか?

ディズニー映画『ヘラクレス』コメンタリ ~One last hope~

前回の記事はこちら。また長いこと空けてしまって申し訳ございません…。

eureka-merl.hatenablog.com

 

無事にピロクテテスに会うことができ、ヘラクレスは彼に英雄になるための指導をお願いします。

なかなか乗り気にならないピロクテテスでしたが、

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ゼウスの雷霆に撃たれては「断る」という選択肢はないのです。さすがヘラクレスのお父ちゃんこと神々の王は強い。

 

今回扱うチャプターはピロクテテスが歌う『One Last Hope(邦題:最後の夢)』と共に進行していきます。

 

 

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ちょっとだけ場面戻りますが、このブロンズ像はどう見てもペルセウス(とメドゥーサの首)ですね。ペルセウスもこのピロクテテスの弟子だった人物です。この映画ではそういうことになっています。

 

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長い間誰も弟子に取っていなかったので、まずは荒れ果てた訓練場の片付けから始まります。

この道具入れに彫られたレリーフは、(左)長い杖と杯を持つ男神、(中)レスリングをする男たち、(右)オリーブ?を掲げる女神、が描かれています。

神々が誰かはわからないのですが、ひとつ言えること。このレリーフの男たちはふんどしのようなものを身に付けていますが、本来運動に励む古代ギリシャの男たちは原則全裸です。

 

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道具入れに入っていたのは諸々の武具とトロフィー(11位)。

壺絵のギリシャ文字っぽい書体ですがどう見ても見慣れたアルファベットですありがとうございました。

 

一方のヘラクレスはやはり怪力を持て余し、道具入れから出てきた剣を振り回す。

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そして近くにあった樹に剣が刺さってしまい、抜こうとして樹を根元から引き抜く(安定)。

その樹が片付け中のピロクテテスに襲いかかり…

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…ピロクテテスの角にオリーブが刺さっています。オリーブの樹だったようです。ギリシャの植物といえばオリーブみたいなとこあるからね。

 

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さて、てんやわんやしながらも立派な陸上競技場が姿を取り戻します。見受けられるのはハードルのあるトラック、棒高跳びおよび投擲のコース、でしょうか。 

ちなみにオリンピックのもととなった古代オリュンピア競技祭で競われた「五種競技」の内容は、徒競走・円盤投げ・槍投げ走り幅跳びレスリング、です。

 

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英雄になる訓練として、ピロクテテスは主に「乙女の救出」方法を教えます。ついでに怪物退治も。

神話上の英雄たちの業績を眺めると、乙女の救出よりは怪物退治、何より戦争でいかに武勲を挙げたかが重要という印象を受けますが、そこはまぁ、ディズニーなので、恋愛ベースでいきたいところなんでしょう。

 

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ちなみに、ピロクテテスが訓練中の合図に使っているのは葦笛。ピロクテテスはサテュロスであり、サテュロスは牧神のような存在なので、牧人の笛である葦笛を使うのです。

 

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そしてこれはどう見ても太極拳です本当にありがとうございました。銅鑼鳴ってるし。

 

さて、諸々の訓練を経て、ヘラクレスはそれなりの戦士になりました。

ピロクテテスは実地訓練と称してテーバイ(作中ではテーベと読まれていますが)を目指します。

テーバイという土地はヘラクレスに関わりの深いところです。というか本来の出身地です。

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「テーバイには何があるの?」

「問題がたくさん」

 そうだね~、テーバイではいろんなことが起きたよね~(白目)

カドモスが創建して以来、この都市ではカドモスの娘たちがさんざんな目に遭ったり、孫たちが神々の怒りを受けたり、かの有名なオイディプス関連の悲劇が起きたり…。

具体的に言うときりがないので、参考になりそうな古典作品を挙げておきますね。本当にここは呪われた土地。

アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』

*ソポクレス『オイディプス王』『アンティゴネー』

エウリピデス『バッカイ』

オウィディウス『変身物語』第3巻

*スタティウス『テーバイス

 

飛び立った直後、彼らは乙女の叫び声を聞きつけて現場に急行するわけですが、そこで待ち受けるものは実際の神話どおりなのか?もはやその期待がバカバカしいか??

 

つづく!! 

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