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ピロクテテスによる英雄講座を受講したヘラクレスは実地訓練を積むためにテーバイへ向かいます。が、その途中聞こえたSOS信号、もといDID(Damsel in distress:乙女の危機)信号を受けてある川へ降り立ちました。
そこでヘラクレス御一行が見たものとは…!?
乙女に襲いかかるクソデカケンタウロスでした。
ええ、ケンタウロスですよ、下半身馬で上半身人間ですから。色は、まぁ、ちょっと普通の人間より青いけど…。
しかしこの乙女、なかなか気が強い。これだけ体格差のある相手に掴まれて「下ろしなさいよ」と怯まず言えるあたり強い。CV:工藤静香だけのことはある。
そしてケンタウロスの名はネッソスというそうです。
ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネ《ネッソスによるデイアネイラ誘拐》1755、ルーブル美術館蔵
川でネッソスという名のケンタウロスに襲われる乙女といえば、この娘ですよ、デイアネイラ。
この事件が起きたとき、デイアネイラはすでにヘラクレスの妻になっていました。夫婦でエウエノスという河を渡るとき、ネッソスは自分が代わりにデイアネイラを向こう岸へ送ろうと申し出ます。しかし、ヘラクレスが河を渡っている最中にネッソスはデイアネイラを自分のものにしようとしました。怒ったヘラクレスは毒矢でネッソスを退治しました。
この後の展開が面白いんですけど、いま言っちゃうのはちょっともったいない気もする(笑)
デイアネイラやネッソスを巡る後日譚は、ソポクレスの悲劇『トラキスの女たち』に描かれています。また、最近新しい日本語訳が出たオウィディウスの『ヘロイデス』のなかにも、デイアネイラからヘラクレスに宛てた手紙があります。
さてさてこっちのヘラクレスは「さがってろ、二本脚」とネッソスにすごまれています。我ながら良いスクショが撮れた。
これ吹替やと「二本脚」のところが「若僧」になってんのもったいない~!脚が四本あることにネッソスがイキってるのが良いのに~!笑
で、こっちのヘラクレスくんはまだヒュドラを倒していない=毒矢を持っていないので、文字通り頭を使ったりしてネッソスを退治したのでした。
これがヘラクレスのヒーローとしての初仕事となりました。が、師匠ピロクテテスの評価は厳しい(戦いの内容的に妥当な評価ではある)。
吹替では「ヒーローごっこ」と言われているところ、もとの台詞は「十種競技」になっています。
古代オリンピック(古代オリュンピア競技祭)で競われていたのは"五種"競技――走り幅跳び、円盤投げ、スタディオン走、槍投げ、レスリング――なんですけどね。
現代の十種競技は二日に分けて行われるそうです。私はスポーツ関係の知識をほとんど持たないのでWikipedia先生に聞きました。
一日目:100m走、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m走
二日目:110mハードル走、円盤投げ、棒高跳び、槍投げ、1500m走
そうそう、助けられた乙女に名乗っていただきました。メガラちゃんです。
いやあんたデイアネイラちゃうんかーい!なんてツッコミは過去に置いてきました。
ところで、ギリシャの未婚女性が男性と普通にお話しちゃうなんてよろしくないことです。
佐藤二葉先生の4コマ漫画『うたえ!エーリンナ』の「女も男も」に出てくるようなのがきっと当時の一般的な反応なんです。
しかしそこはディズニーだしCV:工藤静香なんで気にしないでおきましょう。
「サンダルだって自分で履けるのよ」という台詞から読み取れるのは、少なくとも彼女が奴隷身分ではないこと。それなりの身分のお嬢さんたちは、基本的に召使に身の回りの世話をしてもらうのです。サンダルを脱いだり履いたりするのも。
『うたえ!エーリンナ』の「仕事」でも履き物について触れられています。
まぁ実際の神話のメガラは一国の王女様やから、そりゃ自分でサンダル履いてたらすごいですわ。
神話上のメガラはヘラクレスの最初の妻です。子どもも何人か生まれます。
しかしこの夫婦のその後についてはこのコメンタリシリーズの最終回で書こうと思っているので、気になる方はこちらの悲劇作品をお読みください。悲劇って言っちゃった☆
CV:工藤静香のメガラの素性は次回明らかになります。
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