ギリシア・ローマ文学最大にして最高の作品と名高い『イーリアス』、ローマ建国伝説を描いた『アエネーイス』、250もの神話を連ねた『変身物語』――
これらは全て、叙事詩というジャンルに含まれ、文学ジャンルで最高のものとされています。ルネサンス期ならダンテの『神曲』がありますね。
(ラファエロ・サンティ『パルナッソス』1510)
ヴァチカン宮殿にあるこの絵で、叙事詩人たちがムーサのすぐ近くに書かれているのもそういう訳だそうです。この絵についてはまた別の記事でお話しますね。
さて、短歌が五・七・五・七・七、俳句が五・七・五、と決まっているように、叙事詩にも決まった韻律があります。ヘクサメトロス(六脚律)と言うのですが、これを説明するにはまず、古典語の音節について説明しなければなりません。
音節とは、音のひとまとまりのことで、音節の数と言ったらその単語が何個の母音を含んでいるか、というふうに考えていただければいいかと思います。
まずは日本語で考えてみましょう。
「ホメロス」→ho・me・ro・su
「ウェルギリウス」→we・ru・gi・ri・u・su
ラテン語の場合はどうでしょうか?
「Homerus」→ho-mē-rus
ラテン語の母音には長音と短音があります。「あー」と「あ」です。
ホメロスはラテン語では「ホメールス」と読み、3音節です。ス、の部分は子音のみですので、前のu母音にくっつきます。
「Vergilius」→ver-gi-li-us
rとgが連続しましたね。子音が2つ連続すると、前後の音節に分かたれます。
子音が3つだと?
「sanctus(聖なる)」→sanc-tus
2つは前に、1つは後ろにいきます。
ただし!(b、c、d、f、g、p、t)+(l、r)の組み合わせは子音同士が切り離されません。注意!
「Africa」→A-fri-ca
そして、音節の長短。
子音+短母音→短音節
子音+長母音→長音節
母音+子音→長音節
子音+母音+子音→長音節
母音の前の子音は1つでも2つでも一緒です。
Homērus→ho-mē-rus(短・長・長)
Vergilius→ver-gi-li-us(長・短・短・長)
ざっとこんな感じです!お判りいただけましたか…?
次は六脚律について解説していきます(`・ω・´)