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西洋古典学って、ご存知ですか?

絵画で辿る『変身物語』 第1巻(前編)

読んだことがある人ならわかるでしょう、オウィディウスの書いた『変身物語』の、描写の細かさ、美しさ!

近代ヨーロッパの芸術家たちもその絵画的描写に着想を得て、たくさんの神話画を描きました。

 

今回から 絵画で辿る『変身物語』 ということで、『変身物語』に登場する神話を元にした神話画をずばばばばっと紹介していきます!

さっそく1巻からいきましょー!

 

 

始まりの宇宙は混沌に支配されていました。

それを誰とは言わない神が天と地と海に分け、川や池を作り、山や谷を作り、仲の悪い風たちを適当な位置につかせ、空に星々を散りばめ、魚や獣や鳥を造ったのです。

しかしそれらを支配する存在がいなくて、プロメテウスが土をこねこねして人間を造りました。その後のプロメテウスに起こる悲劇について、この作品は言及していません。

 

人間が生まれ、最初にあったのは黄金の時代です。

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『黄金時代の愛』パオロ・フィアミンゴ、1585年、美術史美術館

黄金時代はまさにこの世の楽園。常春で、働く必要はなく、上下関係もなく。

 

しかし時代がサートゥルヌスからユピテル支配下に移った時、銀の時代が到来して、季節の巡りが生じました。暑いし寒いから家というものを持たなきゃいけないし、植物もうまく育たないから畑を耕さないといけません。

次の銅の時代には、人間は武器を手にすることを覚え、鉄の時代になると争ったり騙したりを覚えるのです。ありとあらゆる悪行のはびこるこの世のひどさは、正義の女神も逃げ出すほど。

 

そしてユピテルは不敬な人間リュカオンのことでぶつぶつと文句を言いつつ決断します。そして京都に行くようなノリでこう言うのです。

「そうだ、洪水を起こそう」(※言ってません)

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『洪水』アントニオ・カラッチ、1615-18、ルーブル美術館

雨がざあざあと降り続け、やがて川は氾濫し、海は荒れ、家畜も住居も沈み、かろうじて水から逃げても飢えのせいで死んでしまう…

 

そんな災厄から逃れた人間がふたり。信仰心に篤いデウカリオンとピュラという夫婦でした。水が引いた世界を見たふたりは絶望して神に救いを求めます。するとテミスからこのような神託が下りました。

「神殿を出なさい。頭を覆って帯を締めた衣を解き、大いなる母の骨を背後に投げなさい」

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ピーテル・パウルルーベンス『デウカリオンとピュラ』1636年、プラド美術館

 

大いなる母の骨、すなわち大地に転がる石を投げてみると、なんと人間が生まれてきたのでした。

そうやっていまの人間は誕生したのですが、洪水の名残で水分多めになった大地からは実に多くの生物が生まれ、ついには怪物ピュトンをも生んでしまったのです。

この大蛇はアポロンがありったけの矢を使って退治したのですが、その時この神様は自分の樹木というものを持っていませんでした。

 

 

……わりと長くなったのでひとまずここまで!『変身物語』の宇宙観はこのようになっているというお話でした(´▽`)

 

ひとによっては「聖書と似てる」と思ったかもしれません。

旧約聖書の創世記はメソポタミアの洪水神話を元としており、それは地中海沿岸地域に広く伝わっていたので、『変身物語』の元となっているギリシャの神話もその影響を受けたようですねー。

小噺でした。次回から神様たちの恋バナが始まります!みんなこういうの好きでしょ?笑