↑これの続きです。
後編は作品内容ではなく、もうちょっとメタい(?)話をしていきます。
つまり以下の紫部分。
◇『フェードル』とは
・恋するイポリット
・アリシーは何者か
◇役者の年齢(青山真治演出ver.との比較)
・パイドラの年齢
あ、そうそう、『フェードル』って実は二年前にも日本で上演されてたんですよ。
その時の話をします。
今回上演されたのは栗山民也氏の演出したもの(以下、栗山版)。
2015年12月には青山真治氏が翻案・演出したもの(以下、青山版)が上演されました。
青山版は内容やら役やらがちょいちょい変わっていましたが、さほど大きな変化ではありませんでしたので、比較対象として出てきていただきます。
役者の年齢
私が最近フェードルというかパイドラに関して考えていることを述べるための前置きとして、無粋ではありますが各役を演じた役者さんの年齢を見てみます。役者さんのお名前は敬称略。計算間違ってたらごめんなさい…。
役名の横に説明付けますが、これはラシーヌ本人によるものです。
*フェードル(テゼの妻、ミノスとパジファエの娘)
*イポリット(テゼと、アマゾン女族の女王アンティオープとの子)
栗山版:平岳大(42) 青山版:中島歩(27)
*アリシー(アテネ王家の血を引く王女)
*テラメーヌ(イポリットの養育係)
栗山版:谷田歩(41) 青山版:高橋洋(43)
*パノープ(フェードルの侍女のひとり)
栗山版:斎藤まりえ(36) 青山版:――
*イスメーヌ(アリシーの腹心の友)
栗山版:藤井咲有里(32) 青山版:――
*エノーヌ(フェードルの乳母にして腹心の友)
栗山版:キムラ緑子(55) 青山版:馬淵英俚可(36)
*テゼ(アイゲウスの子、アテネの王)
青山版アリシーが男性であることと栗山版イポリットが若干年齢上なのは気にしちゃいけないところです、きっと←
両方ともフェードルが乳母より年上になっているのがアレですね…観劇中はさほど気にならなかったので、これは女優さんの技量が素晴らしいということで…。
傾向として考えられるのは、
・フェードルとテゼは同い年くらいで、既に子どもが成人していそうな年齢
・アリシーとイポリットはその子供世代で、同い年くらい
・テラメーヌは親世代
といったところでしょうか。
たしかに「義理の息子に恋をする」というパンチの利いた粗筋から思い浮かべる主人公はそれなりの年齢の女性だと思います。現代の感覚だと。
おそらく大半の読者・観客はその方が物語を呑み込みやすいし、私自身もつい先日までは「パイドラ=それなりの年齢のご婦人」だと思っていました。
パイドラの年齢
ここからは私の考えたことです。あんまり結論出てないので読みにくいかもしれませんがご容赦ください。
古典期アテナイの初婚年齢は、男性30歳前後、女性15歳前後です。
パイドラは初婚です。テセウスはどうかわかりませんが、連れ子(ヒッポリュトス)がいるので初めてではないでしょうし、ヒッポリュトスが青年にまで成長していることを踏まえると50歳ぐらいかもしれません。
ヒッポリュトスが成人しているかどうかはわかりませんが、まぁ20歳前後だと考えてみましょう。(ちなみにアテナイ男子は18歳で成人)
そうすると、です。
パイドラちゃんは15歳くらい。好きになった義理の息子は20歳。夫は50歳。
これ、単に「年齢の近いイケメンに惚れてしまった」という事案ではないかと。
わりと(少なくとも現代日本人の感覚でいけば)普通の恋じゃないかと。
そう考えてしまいました。
とはいえパイドラがテセウスと婚姻関係にあるのは事実ですし、「義理の息子」と関係を持っちゃうなんてことはあってはならないはず。
いくら歳が近くてもダメなものはダメなのかなぁ…とも考えました。
難しい。とっても難しいです。少なくとも私にとっては。
古典期アテナイのひとたちはこの物語をどう受け止めていたのか、ものすごく気になります。
こんなことを考えた『フェードル』観劇、でした!!
日本で古典劇を観られる機会がもっともっと増えればいいなぁ~。