Εὕρηκα!

西洋古典学って、ご存知ですか?

悲劇を破壊した悲劇詩人

ギリシア文学でホメロスと並んで学者たちをざわざわさせているものといえば、ギリシア悲劇でしょう。

1つの悲劇につき約1500行から2000行。作品の長さは叙事詩に比べれば圧倒的に短いものですが、質は負けず劣らず!

いわゆるギリシア古典時代(紀元前5世紀頃)には、ディオニュシア祭というアテナイの大きなお祭りで悲劇が上演されていました。「演劇コンテスト」と言っていいでしょう。

この演劇コンテストにも出場し、今なお悲劇詩人の代表として名を残している人物は3人――アイスキュロス(Αἰσχύλος)、ソポクレス(Σοφοκλῆς)、エウリピデス(Εὐριπίδης)――です。

 

今回はこの3人のうちエウリピデスについてお話していきます。

いつもよりは真面目です。たぶん。

 

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古代のレタス事情調べてみた

いま読んでる本が気になることを言っていたんですよ。

レタスギリシア神話において性的不能の象徴」

 

これはギリシア神話に登場する絶世の美男子アドニスの話に由来します。

アドニスの最期は”狩ろうとした猪にやられて死ぬ”というものです。もともとは”猛獣に果敢に挑んだ”英雄的人物として描かれていたのが、時代が下ると”やられてしまった”部分が注目され、アドニスは弱っちい青年扱いされます。

そしてコロポンのニカンドロス曰く「アドニスはレタスの畑に逃げ込もうとして猪に殺された」

カリマコス曰く「アプロディテはアドニスを猪から守ろうとレタスの中に隠した」

エウブロスの喜劇曰く「アドニスの死体はレタスの中に葬られた」

 

アドニスは先程言ったとおりアプロディテをとりこにした美青年です。お相手は あ の 愛欲の女神アプロディテです。

また、アドニスの母親は没薬もしくは桃金嬢(テンニンカ)の若枝に変身したと言われています。没薬は催淫効果のある香として用いられ、桃金嬢は女性の陰部を示す隠語になっていたようです。

これらのことから考えるに、アドニスの存在は性欲そのものと結びついていたとしてよさそうです。

 

つまり、アドニスの死=性欲の死、性的不能であり、これと結びつくレタスは性欲減退をもたらす植物と考えられます。

 

 

・・・・・・という話を某氏に話していたら一言、

「へー、じゃあ古代のひとたちサラダとか食べなかったの?」

 

・・・・・・たしかに気になる!!!

というわけで調べてみました☆

 

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悲劇か喜劇か、悪女か良妻か。

ヘレネといえば、トロイア戦争勃発のきっかけとなった絶世の美女。

以前紹介したエウリピデスの『トロイアの女たち』では、自らパリスにほいほいついていった淫婦・悪女として描かれています。

これがヘレネの一般的なイメージなんですよね。でも違うヘレネもいたんです。

 

紀元前6世紀頃の詩人ステシコロスが提案したヘレネは、とても悪女とは言えない貞淑な女性でした。このヘレネ像を元にエウリピデスが書いた悲劇が『ヘレネ』です。

悲劇と言いつつハッピーエンド、そして新たなヘレネ像の登場など、学者たちがさまざまな論を打ち立てるこの作品を、今回は紹介していきます( ´ ▽ ` )ノ

 

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