皆さんは東京ディズニーシーのアトラクション「フォートレス・エクスプロレーション」をご存じでしょうか。エントランスを抜けてお土産店を通り過ぎた先に広がる地中海の景色、中央にそびえるプロメテウス火山のふもとに構えられた要塞のことを。
この要塞こそが「フォートレス・エクスプロレーション」です。そして、開園当初はそうではなかったはずですが、現在は「探検家・冒険家学会」である「S.E.A(Society of Explorers and Adventures)」の活動拠点として我々にも開放しています。
これらのようなS.E.Aの紋章を施した旗が要塞周辺に掲げられています。ラテン語で「EXPLORATIO CONTINUA(絶え間なき探求)」と書かれています。まさに「冒険とイマジネーションの海」を象徴する場所と言っていいでしょう。
さて、その中に入ったことのあるゲストはどれだけいるでしょうか。
なぜこんなことを訊くかって、それは開園当初から22年経った今まで(ハーバーショーの時間を除いて)ここに人が集まっているのを見たことがないからです。
わかります、わかりますよ。
せっかくディズニーシーに来たならセンター・オブ・ジ・アースやタワー・オブ・テラーで思いっきり絶叫したい。トイストーリー・マニア!で遊びたい、ソアリンで飛行体験をしたい。わかります。
ここに来るのは予約したマゼランズでお食事をするときだけ。もしくはハーバーショーを良い位置で観るため。そうでしょうとも。
たしかにここには絶叫ポイントはありません。ゲーム要素も(レオナルドチャレンジの謎解きを除いて)ほとんどありません。ただ地中海要素を足すための装置と思われても仕方ありません。ランドのアトラクションでいうならスイスファミリー・ツリーハウスのような位置付けでしょう。
でも私はここが好きなので!!!今回プレゼンいたします!!!ここにどんなロマンが眠っているのかを!!!!!(冬なのに暑苦しいオタク)
※科学の話多めですが、私は物理が本当に苦手だったので間違いがあれば優しめに教えていただけるとうれしいです…。
フォートレス・エクスプロレーションの中はこのような造りになっています。(この地図は謎解き企画「ザ・レオナルドチャレンジ」に参加すればもらえます)
地図がなければ迷いそうですが、要塞なので仕方ありません。敵にあっさり構造を読み解かれてしまっては意味がないのです。
ではこの地図に記された順番どおりに各部屋を見ていきましょう。
Pendulum Tower
大きな振り子が揺れる部屋です。吹き抜けになっていて、上の階からも振り子を眺めることができます。
大航海時代という背景を加味すると、この振り子が示すのはガリレオが発見した「振り子の等時性」――揺れの幅が小さい場合、振り子の揺れの周期は重さや振幅に関係なく一定であり、周期は「等価振り子の長さ」にのみ影響される――です。
ただし、床に置かれた(一部倒れている)ピンの様子から、これは1851年に考案された「フーコーの振り子」と見るべきでしょう。振り子の左右の振れ幅が一定であるのと同時に、地球の自転に合わせて振動面が少しずつ変化することがわかるようになっています。
Illusion Room
左右と奥の壁、天井、床に絵が描かれており、手前に置かれたレンズ越しにその絵を見る部屋です。そのまま絵を見ると若干歪んでいるのですが、レンズを介すると五面の境界がなくなり違和感のない一枚絵に見えるという不思議。特定の角度から見ると歪みがなくなる「アナモルフォーシス(歪像画法)」という16世紀初頭から使われた技法です。
崩れる神殿から逃げ惑う人々が描かれていますが、背景に火山が見えるのでポンペイの噴火の様子だったりするのかな~と。服装が古代のそれじゃないけど、そういうアナクロニズムは実際の絵画にもあるもんね。
Explorers' Hall
通路の両側に科学の発展に関する絵が描かれていたりかつて活躍した科学者たちの肖像画が掛かっていたりする部屋です。ここに関しては説明が長くなるので別記事にします。公式ブログの写真がとても良いのでご覧ください!
Navigation Centre
100円入れると船を操縦して遊べる部屋です。いわゆる「平面の地球」を航海できるわけですが、太陽系儀がある時代にこれも信じられていたというのは、まさに科学が発展途上にあったということなのでしょうかね。
天井は星空のようになっています。一ヶ所だけ雨が降るところがあり、そこには風を吹く男神の絵があります。ゼウスかアイオロスかそれ以外か…。
Camera Obscura
ラテン語で「暗い小部屋」を意味するこの暗室にはTDS内のどこかが映し出されています。人間の目が眼球のレンズを通して光を集め、それを網膜上に写し取って視覚を得ているのとまったく同様に、カメラ・オブスキュラを自分が見たい方向に向けると、その光景がレンズを通して磨りガラスの上に現れるという仕組みです。15世紀頃に絵を描くための装置として利用されはじめ、レオナルド・ダ・ヴィンチが写生のためにこれを利用したそう。
この要塞内にあるのは部屋まるごとという最も原始的なタイプのカメラ・オブスキュラです。ハンドルを動かすと見える景色が変わります。
Sundial Deck
日時計が置かれています。矢は北を指しており、リングの外側には黄道十二星座のサインが、内側にはローマ数字が刻まれています。リングの内側に落ちた矢の影で時間を計測できるという仕組みです。
もちろん季節によって太陽の昇り沈みの周期は変わるのでバッチリ正確な時刻を示すわけではありません。ちなみにこの写真を撮ったのは13時ちょうどでした。
Chamber of Planets
16世紀に造られた太陽系儀がどーんと置かれ、ドーム型の天井にはさまざまな星座が描かれています。ガリレオが観測したとおり、木星には4つの衛星が、土星には環がついています。
ハンドルを回すと対応する惑星が太陽の周りを公転します。そしてハンドルの前には各惑星の説明を書いたプレートがあります。
プレート上部は惑星の公転の軌跡の図があります。太陽を中心に水星、金星、地球、火星、木星、土星の輪が描かれ、その外側に「恒星の空(Ciel des etoile fixe)」と書かれています。ここはフランス語です。
プレート下部には各惑星の説明が英語と日本語で書かれています。
部屋の壁にはレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされる太陽系に関する研究ノート。諸々の現象を解明しようとした痕跡が刻まれています。
Flying Machine
レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したオーニソプターを再現したものです。オーニソプター(ornithopter)という名前はダ・ヴィンチが付けたものではありませんが、古代ギリシャ語で「鳥」を意味するὄρνις(語幹はὄρνιθ-)と「翼」を意味するπτερόνを組み合わせた言葉です。
以前はマシーンに乗り込んでペダルを漕ぐことで翼やプロペラを動かせたのですが、今はロープが張られて乗れなくなっています。なんでー。
ちなみにこのマシーンの真下にマゼランズがあります。
Alchemy Laboratory
16世紀に盛んとなった錬金術を行っているという部屋です。この部屋のものは触れません、見るだけ。
錬金術では相反するものの統一を象徴するというウロボロス(尾をのみこむ蛇)の絵も貼られています。土星、木星、火星、水星、月、金星のサイン(真ん中の赤いのは太陽?)が描かれていますが、何を意味するのか…。
Cannons
ここはマジで大砲があるだけです。いちおう一台は紐を引いて打っ放す(ふり)ができます。
Cargo Playground
船の積み荷と思われる木箱や樽が置かれており、子どもが上ったりくぐったりできます。地面はトゥーンタウンの公園みたいな柔らか仕様。ただし思いっきり水漏れしている箱もあるので注意!
私が行った日も遊んでいる子がいて写真を撮れなかったので、このブログに載っているものをご参照ください。
Renaissance
要塞のすぐそばに停泊しているガリオン船ルネサンス号。蒸気船トランジット・スチーマーラインで限界まで近づいた写真がこちら。
船の隣にはでっかいクレーンもあります。
船内は自由に見学できます。とても精巧な造りで、船員のベッドや食器から生活感も感じられます。ちなみに船尾側にストーブがあってちゃんと暖かいので冬も安心(?)
*****
地図には載っていませんが、要塞内には望遠鏡やら火山活動観測システムやらもあります。階段だけでなくエレベーターも完備しているので、ぜひ休憩がてら遊びに行ってみてください!