Εὕρηκα!

西洋古典学って、ご存知ですか?

『聖なる鹿殺し』とギリシア悲劇

先日、映画『聖なる鹿殺し』を観てきました。

原題はThe Killing of Sacred Dearで、日本語題はそのまま訳したものになっています。

このサイコホラー映画の監督はギリシア生まれのヨルゴス・ランティモス氏です。日本で公開された彼の作品にはほかに『籠の中の乙女』『ロブスター』があります。

『聖なる鹿殺し』のストーリーやキャスト・スタッフ情報は公式ホームページをご覧ください。

 

さて、この映画を語る上でところどころ話題に上がっているのが、悲劇作家エウリピデスによる『アウリスのイピゲネイア』です。

監督自身はインタビューでこう述べています。

必ずしもそこからインスピレーションを得たわけじゃない。でも脚本を書いている時にギリシャ悲劇と似ている部分があることには気がついた。面白いアイディアだと思ったよ。でも、ギリシャ悲劇を映画化しようとして始めたわけじゃないんだ。(『聖なる鹿殺し』日本版公式パンフレット13頁)

 

とはいえ、やはり劇中には古代ギリシア悲劇を感じさせる箇所がいくつかありましたので、今回記事を書くことにしました。ストーリーの謎より、どのあたりが悲劇に近いかを解いていくことになります。本当に『アウリスのイピゲネイア』に似ているのか?とか。

※この先ネタバレを多分に含みますので、未鑑賞でこれから観る予定のある方は閲覧を控えることをお勧めします。

 

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『うたえ!エーリンナ』についてあれこれ

ツイ4というサイトで連載されていた漫画『うたえ!エーリンナ』、先日単行本化されましたね!詩人になることを夢見る、(当時の価値観に基づけば)ちょっと変わった女の子エーリンナの女学校生活のお話。

作者は佐藤二葉さん。古代ギリシアの竪琴リュラーを弾きギリシア悲劇を語る、現代日本に生まれ落ちたバッケー(!?)です。ムーサに愛されておられる。

 

 

漫画について、あるいは作者についてはこれくらいに留めておきまして…。

 

私がこのブログでやることは、この漫画を読んで実際にエーリンナやサッポーの詩に触れてみたくなった方、あるいは古代ギリシア語を読んでみたくなった方の道案内です。

具体的には、

①ふたばさんが巻末で一次資料として挙げていた書籍の紹介

②史実エーリンナさんの詩の紹介(リンクあり)

③『うたえ!エーリンナ』各回タイトルのギリシア語をカタカナ音写

をやっていきます!

特に③が長いぞ!

 

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『アンチゴーヌ』観てきました

2/17(土)、穂の国とよはし芸術劇場PLATにて『アンチゴーヌ』13時の回を観てきました!

 

原作者は20世紀フランスの劇作家ジャン・アヌイ。

それなりに古典の知識を持つ方ならタイトルからお察しのとおり、この劇は古代ギリシアの悲劇作家ソポクレスによる『アンティゴネー』の翻案です。

今回演出を担当したのは栗山民也氏、翻訳は岩切正一郎氏です。以前私も観に行った『フェードル』の時と同じコンビですね。

そしてこのコンビで昨年10月にジロドゥの『トロイ戦争は起こらない』もやっていたそうなのですが、完全に見逃しました。情報すら手に入れていませんでした。悔しい。

『フェードル』のレポートはこちらになります。

アンチゴーヌ役は蒼井優さん、クレオン役は生瀬勝久さんで、東京・豊橋のほかには松本・京都・北九州で上演されました。

 

今回は演出面でいろいろ面白いところがあったので、それらを踏まえて『アンチゴーヌ』という劇について考えてみたいと思います。

※全公演終了したので思いっきりネタバレしています。

 

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