Εὕρηκα!

西洋古典学って、ご存知ですか?

ディズニー映画『ヘラクレス』コメンタリ ~Search for Philoctetes~

前回の記事はこちら

eureka-merl.hatenablog.com

 

本来自分がいるべき場所は神々の住まいオリュンポスであったと知ったヘラクレス

人間である彼が再びその地へ戻る(=神になる)方法は、地上で本物のヒーローになることと父ゼウスは教えます。

ヒーローになる方法を探るべく、ヘラクレスはまず「ヒーロー専門のトレーナー」である「ピロクテテス」という人物に会いに行くことにしました。

 

……正直この「ピロクテテス」の造形が古典学者と古典通を最も怒らせるポイントじゃないかと私は思っています(´・ω・`)

 

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ペガソスと共に降り立った島は霧に満ち、人気のないところ。

本当にここに「ピロクテテス」がいるのかと訝しみながら進むと、そこには泉とニンフたち。

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そしてその泉のそばの茂みから見える山羊の尻。

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抜け出せなくなったみたいだから助けてあげよう!と優しいヘラクレスくんがそのお尻を掴んで引っこ抜くと

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茂みから出てきた上半身はおっさんでした。

 

おっさんがヘラクレスを怒鳴りつけたもんだから、ニンフたちも見られていたことに気付き、逃走。

おっさん、追いかけるもニンフたちは植物に変身してやり過ごす。

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捕まえたと思ったら変身されるとかね、神話ではありがちな展開ですね。

シュリンクスとパーン、あるいはアポロンとダフネみたいな関係。オウィディウスの『変身物語』1巻にどっちの話もあるから読んでみてください~

樹に変身したニンフはこの後サテュロスの頬を枝で全力ビンタするんですけど、個人的にはパラレルワールドの『変身物語』のダフネって感じで好きです。

factis modo laurea ramis
adnuit utque caput visa est agitasse cacumen. (Ov. Met. 1.565-566)

月桂樹はたった今できた枝で

頷き、頭を動かすように梢を動かしたように見えた。 

この箇所については「あんなに全力で逃げてたのに『頷く』とかこんなん絶対嘘やんアポロンさん勘違い乙」って私は思っています(辛辣)

ダフネちゃんがもっと気の強い子だったらアポロンがビンタされる展開もあったかもしれない。

 

ものすごく話が逸れました。

さて、せっかくのニンフ鑑賞を邪魔されたおっさんは不機嫌に。お楽しみを邪魔した張本人であるヘラクレスがぼけーっとしているので、「サテュロスを見るのか初めてか?」と声をかけます。

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半人半獣のサテュロスといえばたしかに好色な、もっと言えば女好きの妖怪。

この後もこのサテュロスはちょいちょいエロ親父感を出してきます。

 

気を取り直してヘラクレスくん、おっさんに「ピロクテテス」の居場所を尋ねます。

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いやお前かーい!

 

ギリシア・ローマ文学に登場するピロクテテスを知るひとなら

「ディズニーは思い切ったことをするなぁ」とか

「どうしてこうなった」とか

「私の推しを返して!!」とか

いろいろ思うところがあると思います。

 

そもそも古典のピロクテテスはサテュロスじゃなくて人間やし

別に「英雄専門のトレーナー」じゃないし

どっちかというとトレーナーやってたのはピロクテテスじゃなくてケイローンやし

ケイローンサテュロスじゃなくてケンタウロスやし(下半身が山羊じゃなくて馬)

もう全方向から違ってて逆にもう受け入れるしかないなって。

 

まぁ複雑な気持ちにはなりますが当のヘラクレスは未来の師匠との邂逅を喜ぶのです。

そして交渉に入るのですが、ここからの展開はまさにディズニーらしいアレンジとも言うべきか。つづく!