シリーズ「推しを語る」第3回です。
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前回扱った『恋の歌』は、内容はさておき、恋愛エレゲイア詩の伝統(と言うほど年季の入ったジャンルではありませんが)に則った作品でした。
今回扱う『名高い女たちの手紙(Heroides)』――ちょっと長いので以下『ヘロイデス』と呼びます――は、恋愛を主なテーマに据えていてエレゲイアの韻律で書かれている、という特徴は前作と共通していますが、タイトルにも表れているとおり、とてもユニークな設定で書かれています。
この作品は21篇の「手紙」から成っています。第1~15篇は神話伝承の中の女性たちがパートナー(?)たる男性へ送った単独書簡、第16~21篇は男女の恋人たちの間で交わされた往復書簡です。
今回はこのような観点で『ヘロイデス』を紐解いていこうと思います。
① タイトルについて:heroisとは?
② これまでの恋愛詩&書簡詩との違い
③ 書き手と読み手の「見る範囲」
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