ここの読者層がいまいち捉えきれていないままなのですが…
漫画『未来日記』をご存知でしょうか?
ストーリーの複雑な漫画なので説明しだすとたいそう長くなるのですが、
ご存知ない方のためにごく簡単に説明すると、
・予知能力を持つ「日記」を所有する12人が1人になるまで殺しあう
・優勝者は「神」になる
というストーリーです。タイムリープなどのSF要素や、「日記」を使ったトリックなどのミステリー要素もあります。
このブログで取り上げる理由はただひとつ。
主要登場人物の名前がギリシア・ローマの神々の名前を由来としているから。
漫画自体のステマじゃないです()
多くの場所で名前に関する考察・解説が既に為されてはいるのですが、
どれもなんだか少し物足りない気がするので、古典畑の私も参加させていただきます\ドン/
ネタバレ含むかもしれないので、これから漫画を読む予定の方はちょっと注意してください~。
↓今回は日記所有者の名前だけ。↓
1st 天野雪輝(アマノ・ユキテル)
「ユキテル」と「ユピテル」をかけています。ギリシアで言えばゼウス。
どちらも天候を司る最高神なので、「天野」という苗字もそこ由来かもしれません。
2nd 我妻由乃(ガサイ・ユノ)
「ユノ」はそのままでローマの結婚の女神を指します。ギリシアで言えばヘラです。
「我妻」という苗字からは、ユピテルの「正妻」であることを示唆している気がします。
ヘラは嫉妬深いことで有名になっていますが、この女神はあくまで結婚生活の秩序が乱れること(不倫など)が許せないだけで、単なる嫉妬とはまた違うんですよ…、と女神を庇っておく。
由乃ちゃんが雪輝くんに異常なまでに執着するのも、ヘラの嫉妬深さ(仮)から来ているのかなぁと思います。
3rd 火山高夫(ヒヤマ・タカオ)
「火山(カザン)」は英語でvolcanoです。これは鍛治の神ウルカヌス(Vulcanus)から来ています。ギリシアならヘパイストス。
登場して早々に脱落した彼ですが、そういうちょっと不遇なところもヘパイストスに似てるのかなぁと思ったり…。(ヘパイストスは何かと天から投げ飛ばされる)
4th 来須圭吾(クルス・ケイゴ)
「来須(クルス)」が「メルクリウス」にかかっているようです。ギリシアのヘルメス。
商業、伝令、そして泥棒の神でもあるヘルメスをもとにしたキャラクターが刑事というのはなかなか皮肉っぽい。
5th 豊穣礼佑(ホウジョウ・レイスケ)
「豊穣」の女神「ケレス」から。ギリシアのデメテル。
苗字がそのまま女神の権能を表しており、「"れいす"け」という名前も「ケ”レス”」と重なっています。
6th 春日野椿(カスガノ・ツバキ)
「春」の女神プロセルピナ(ギリシアのペルセポネ)だという説が主流のようですが、
主題歌である『空想メソロギヰ』の歌詞(後述します)から考えるに、予言の神アポロ(ギリシアのアポロン)ではないかと思います。
宗教団体の教祖であり、予言の才を持つ彼女なので、性別は違えどアポロでも違和感はないはずです。
また、ギリシア世界でもアポロに神託を伺いに行くことはよくあり、実際に予言を受け取って発言するのは巫女だったので、椿をデルフォイの巫女と重ねているのかもしれません。
7th 戦場マルコ(イクサバ・マルコ)& 美神愛(ミカミ・アイ)
マルコは「戦争」の神「マルス」(ギリシアのアレス)
愛は「美と愛」の女神「ウェヌス」(ギリシアのアフロディーテ)
で間違いないと思います。
ところでアフロディーテは「愛と美の女神」とよく言われますが、そんな綺麗なものではなくて(笑)
「愛」というより「愛欲」の女神。男女の性的関係を司る女神です。
また、神々はみな美しいという設定(ときどき例外アリ)なので、別に「美」は司らないと考えてよいかと…。彼女が司る「美」というものがあるなら、あくまで「性的魅力」と捉えた方が適切だと思います。
名前についてはほぼそのままなので何も言うことありませんが、
この二人がセットになっているのは『オデュッセイア』などに登場する、アレスとアフロディーテの密通の神話がもとになっていると思います。
8th 上下かまど(ウエシタ・カマド)
「かまど(の火)」を司る「ウェスタ」女神でしょう。(ギリシアのヘスティア)
上下(ウエシタ)という苗字がウェスタという音由来。
特にこれといった神話がないので非常に存在感の薄い女神ですが、かまどの火というのは家の中央にあり、家庭を司る者として非常に重要な、また身近な女神です。
かまどさんは児童養護施設の院長であり、いわば施設のお母さん的存在。”家庭”を守るウェスタ女神と重ねられるに最も適した人物だと思います。
9th 雨流みねね(ウリュウ・ミネネ)
知恵と戦と技芸の女神ミネルウァ(ギリシアのアテナ)から音を採っているはず。
ギリシア(特にアテナイ市)におけるアテナも、ローマにおけるミネルウァも、非常に目立つ上に都市にとって重要な女神。
物語の序盤から終盤までかなり派手に動き回り、ストーリー展開に大きく関わる彼女は、まさにこの”主役級”の女神の立ち位置にいるのでは。
10th 月島狩人(ツキシマ・カリュウド)
狩りの女神ディアナ(ギリシアのアルテミス)。
ディアナはもともと月の女神ではないのですが、後の時代に混同されたので苗字に「月」が入っているのだと思います。
また、ディアナは「獣たちの女王」とも言われたりするので、月島さんもあれだけの数の猟犬を束ねる人として描かれているのでしょう。
11th ジョン・バックス
酒の神バッコス(ギリシアのディオニュソス)。
バッコスは酒というより「酒に酔うこと」そして「酩酊」や「狂気」と非常に関係が深い神です。
バックス市長がディオニュソスとどう重なるのかと考えたのですが、ディオニュソスは”神と人間とのハーフ”であり、バックス市長も日記制作に携わった”神と人間との間の存在”です。そこかなぁ…。
12th 平坂黄泉(ヒラサカ・ヨモツ)
黄泉…というか冥界の王プルートー(ギリシアのハデス)
まぁハデス要素は名前だけでしょうね…、ハデスはあんなに勧善懲悪に執着しない…。
* * * * *
さて、ギリシアで12といえば「オリンポス12神」であり、日記所有者の名前も一見それに重ねられているのですが、
ネプトゥーヌス(ギリシアのポセイドン)がいません。
そもそも12神に含まれるはずのないハデスがいたり、一方しか入れないディオニュソスとヘスティアが共存している時点でオリンポス12神とは違うんだなと推測できるのですが…。
このあたりは次回考えていこうと思います!