【どう森×古典学】森のどうぶつ達意外と教養ある説【前編】
あつまれどうぶつの森略してあつ森発売記念じゃ~い!!
皆様ご存知でしょうか「どうぶつの森」シリーズ。
2001年にNINTENDO64向けソフトとして第一作が発売され、ゲームキューブ、ニンテンドーDS、Wiiといったハードが出るたびに新作が誕生し、もうすぐNintendo Switch向けにも最新作が発表される任天堂の人気シリーズのひとつです。
プレイしたことのある方はご存知でしょうが、どうぶつの森シリーズでは一緒に森に暮らすどうぶつ達と仲良くなると「しゃしん」をもらえます。
しゃしんの裏には、そのどうぶつの誕生日と「好きな言葉」が書かれています。
この「好きな言葉」あるいは「座右の銘」、おふざけありことわざありでなかなか見ていて面白いのです。
この記事では、「好きな言葉」がギリシア・ローマ関係であるどうぶつたちを紹介しつつ、その元ネタや関連作品なんかについてお話していきます。
※ 3DS版の「とびだせどうぶつの森」および「amiibo+」に登場するどうぶつに限ります。
※テキストは Perseus Digital Library から引っ張ってきました。
※珍しくラテン語には長音記号、ギリシャ語にはローマナイズしたものなんか付けちゃったので、ぜひ推しがいた場合は覚えて唱えてみてください。ローマ字読みすればOKです!
※今回は岩波文庫から出ている柳沼重剛(編)『ギリシア・ローマ名言集』をかなり参考にしました。こちらもぜひ読んでみてください!
カモミ「善は急げ」
日本語のことわざとしてもお馴染みの「善は急げ」ですが、ラテン語のことわざは言い回しがまるっと反対です。
Perīculum in morā. あるいは Mora trahit perīculum.
というのがラテン語版で、直訳すると
「遅れの内に危険あり」「遅れが危険を引っ張ってくる」となります。
キャラメル「中くらいの幸せが一番よい」
どうぶつの森の看板住民のひとりキャラメルちゃん。
中くらいの幸せ、とは、いかにも「わたし系住民」が好きそうな言葉です。
中庸を良しとする思想は東洋の儒教においてのみならず、古代西洋にもありました。
ギリシャ語だと μηδὲν ἄγαν / mēden agan や Mέτρον ἄριστον / metron ariston といった有名な格言が中庸の思想を表しています。
英語だと中庸のことをGolden Meanと言いますが、これはホラティウスの『カルミナ』2.10.5に出てくる Aurea mediocritās というフレーズに由来します。
また、オウィディウスの『変身物語』2.137では、太陽神が息子パエトンに太陽の馬車を御するコツとして in mediō tūtissimus ībis すなわち「(高すぎず低すぎず)真ん中を行くのが最も安全」とアドバイスします。
ビンタ「右のほおを打つ者に左のほおを向けよ」
およそ食べ物のことしか考えていない「ぼく系住民」からこの言葉が飛び出すとは。
まぁ名前が名前だからね。こちらも人気住民のひとりビンタくん。
これは有名な聖書の一節で、「目には目を、歯には歯を」の真逆を行く教えです。新約聖書の中の『マタイによる福音書』5章39節に書かれています。
ἀλλ᾽ ὅστις σε ῥαπίζει εἰς τὴν δεξιὰν σιαγόνα [σου], στρέψον αὐτῷ καὶ τὴν ἄλλην:
all(a) hostis se rhapizei eis tēn deksian siagona [sū], strepson autōi kai tēn allēn:
フリル「類は友を呼ぶ」
古き良きゴスロリ風の羊、フリル姐さん。この見た目と座右の銘ならきっとお友達もみんなバンギャ(適当)
このことわざは古代地中海世界で古くから、いろんな言い回しで唱えられていたようです。いろいろあったので一部ご紹介。
ὡς αἰεὶ τὸν ὁμοῖον ἄγει θεὸς ὡς τὸν ὁμοῖν.
hōs aiei ton homoion agei theos hōs ton homoin.
→神はいつも似たもの同士を合わせる。
プラトン『饗宴』195B
ὁ γὰρ παλαιὸς λόγος εὖ ἔχει, ὡς ὅμοιον ὁμοίῳ ἀεὶ πελάζει.
ho gar palaios logos eu echei, hōs homoion homoiōi aei pelazei.
→古い言葉はよく言ったものだ、似たものは似たものにいつも近づくと。
テオクリトス『牧歌』9.31-32
τέττιξ μὲν τέττιγι φίλος, μύρμακι δὲ μύρμαξ,
ἴρηκες δ᾽ ἴρηξιν, ἐμὶν δέ τε μοῖσα καὶ ᾠδά.
tettiks men tettīgi philos, myrmāki de myrmāks,
īrēkes d(e) īrēksin, emin de te moisa kai ōidā.
→蝉は蝉に、蟻は蟻に、鷹は鷹に親しく、音楽と歌とは私に親しい。
ミラコ「求めよ、さらば与えられん」
私この子のことはあまりよく存じ上げないのですが、座右の銘はビンタくんと同じく有名な新約聖書の一節です。
『マタイによる福音書』7章7節と『ルカによる福音書』11章9節に Αἰτεῖτε, καὶ δοθήσεται ὑμῖν / aiteite, kai dothēsetai hymīn と書かれています。
※ ὑμῖν (hymin) の y は長音です
「求めなさい、そうすれば与えられる」の後には「探しなさい、そうすれば見つかる。門を叩きなさい、そうすれば開かれる」と続きます。
続きはこちらから