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西洋古典学って、ご存知ですか?

【Amores】推しを語る #2

うっかり始まってしまった「推しを語る」シリーズですが、前回はオウィディウスの作品に一切触れることなく終わってしまいました。

↓こちらからどうぞ 

eureka-merl.hatenablog.com

 

今回からオウィディウスの各著作を見ていきます。まずはデビュー作『恋の歌(原題:Amores)』についてです。

紀元前25年、18歳のオウィディウスはこの作品で華々しくデビューしました。ガッルス、ティブッルス、プロペルティウスに続く四人目の恋愛エレゲイア詩人が誕生したのです。

ところが、オウィディウスの書くエレゲイア詩は、形式こそ先輩たちに倣ってはいたものの、どうも目指しているところというか見ているものが違っていました。

この「先輩たちとの違い」が今回のポイントです。

 

ところで、作品タイトルのAmoresとはamorすなわち「恋」の複数形です。Amorという恋の神様もいますが、彼については別名の方が知られています。ラテン語でいうとクピードー、英語だとキューピッドと言われるあの神様です。

キューピッドというと、背中に羽を生やしていて、弓矢でハートを射抜いてくる少年神を想像する方が多いと思います。ギリシャでは違っていましたが、オウィディウスの頃にはほぼこのイメージが定着していました。

この神様とひと悶着あるところから作品は始まります。

  

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【... et Naso】推しを語る #1

皆様お久しぶりです。

そして何ヶ月も更新せず既存の連載記事も完結していないのに新しいシリーズを始めます。題して「推しを語る」

私の「推し」、つまりオウィディウスという詩人について好き勝手語り散らすシリーズです(今回含め全10回の予定)。

というのも、今年度も私は大学でTA(ティーチング・アシスタント)を務めていて、西洋古典文学史の授業でイラスト付きの資料を描くという仕事を仰せつかっていました。

その締めくくりに、私の研究対象であるオウィディウスの作品について形式は何でもいいからとにかく語ってほしいという最高の仕事をいただいたのです。

そして興奮しまくった私は学部生向けの資料だというのに二万字超えの怪文書を作ってしまいました……笑

で、せっかく書いたからここにも載せたろ!!!という次第です。

 

もとの文書の内容は、オウィディウスの生涯を辿りながら彼の各著作についての概要を説明していく、というものでした。

ここには分割して加筆修正したものを載せていきます。

 

第1回である今回は【... et Naso】、つまり「〇〇とナーソー」と題しました。

○○に入るのは、彼の作品を紐解く上で欠かせないキーワード、「エレゲイア」「恋愛詩」「カリマコス」です。

今回はこのキーワード3つと、オウィディウスの詩人デビュー前の経歴についてお話していきます。

 

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Sound Horizon ギリシャ語ラテン語&神話まとめ

幻想楽団 Sound Horizon 略してサンホラ。物語性のある楽曲を作るちょっと変わったアーティストです(曲を作っているのはRevo氏ひとりですが)。

主に西ヨーロッパ世界を物語の舞台に設定しており、歌詞にはフランス語、ドイツ語、スペイン語などさまざまな言語が用いられます。もちろん物語の内容はフィクションですが、歴史上の出来事や神話・童話の要素が多く盛り込まれているのもポイント。

前回は6th story CD『Moira』の主人公エレフに注目し、彼のモデルになったと考えられるギリシャ神話上の英雄をまとめました。 

eureka-merl.hatenablog.com

 

『Moira』はギリシャを舞台としているので当然といえば当然でしたが、このアルバム以外でもギリシャ語やラテン語の歌詞を使った曲が多数あります。ギリシャ神話に由来する物語も。

今回はそれらのまとめ記事です。インディーズ時代から9th story CD『Nein』まで含めると結構な数になりました。

※ 『Moira』はアルバム全体にギリシャ語が散りばめられていてかなり数が多いので後日別の記事にします。

 

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